現場から報告された数字を正しく記帳し、「よし、完璧!」と思っていた矢先。
先輩から「今月の通信費、急増してるけど何かあった?」と聞かれ、慌てて確認したところ、そもそも上がってきた報告数字が間違っていた……なんてことがあります。
なぜ、「数字の歪み(異常値)」を見抜けるのでしょうか?
本記事では、教科書やマニュアルには書かれていない、熟練経理が頭の中で働かせている「違和感センサー」の正体と、それを身につけるポイントを徹底解説します!
【結論】違和感センサーの正体とは?

結論から言うと、ベテラン経理は試算表の数字を「単月の縦の計算」としては見ていません。
過去の傾向や事業活動(現場の動き)と連動した「横の比較」として見ています。
新人の見方(点観察): 「今月の旅費交通費は50万円。仕訳の集計は合っている。」
ベテランの見方(面観察): 「今月の旅費交通費は50万円。過去6ヶ月の平均は20万円で、今月は大口の出張報告もなかったはず。なぜ2.5倍に跳ね上がっている?」
日本公認会計士協会の監査基準で用いられる「分析的手続(実証的分析手続)」というものがあります。
これは、詳細な個別データ(請求書や領収書など)を1つずつ調べるのではなく、全体的な関係性から効率的に正しさを検証するための手法です。
ベテラン経理はこれと同じ思考プロセスを、日々の業務で無意識に「直感」として働かせているのです。
「現場の動きと帳簿のズレ」を嗅ぎ取ることこそが、違和感センサーの正体です。
具体例「4つのチェックポイント」
ベテラン経理が試算表(特に月次推移表)を確認するときに、無意識に目線を走らせている4つのチェックパターンを紹介します!
➀「利益が出ているのに売掛金と在庫が増え続けている」パターン

通常の場合、売上・売掛金・在庫(棚卸資産)はほぼ同じような比例スピードで増えていきます。
違和感のポイントとして、売上が伸びるペースに対して、売掛金や棚卸資産の増加スピードが異常に早い場合、売掛金の回収遅延や「売れていない在庫」が溜まっている証拠です。
これは、黒字倒産のリスク、または売上架空計上・不良在庫の隠蔽というリスクが潜んでいる可能性があります。
このような場合ベテラン経理は、下記2点を現場に確認します。
売掛金の回収状況のチェック
→取引先ごとの売掛金が未回収のままどれくらいの期間経過しているか確認
在庫のチェック
→売れ残りや長期保管によって、倉庫や店舗に放置されたままになっている商品がないか確認
➁「売上が増えているのに費用が横ばい」パターン
違和感のポイントとして、自社の業務キャパシティを超えた売上が出ている場合、通常は外注費や残業代などの変動費が連動して増えるはずです。
売上だけ増えてコストが増えていない場合、請求書の受取遅れや計上漏れ、期ずれの可能性があります。
このような場合ベテラン経理は、現場担当者に「今月納品された〇〇案件の外注請求書、まだ経理に届いていないよね?」と先回りして確認します。
➂「毎月定額のはずの固定費が微妙にズレている」パターン
地代家賃、通信費、サブスク利用料などは毎月同額であるのが基本です。
違和感のポイントとして、例えば「通信費が毎月10万円なのに、今月だけ20万円」であれば、前月分の振込遅延による2ヶ月分一括処理や、二重支払、誤った科目への計上が疑われます。
このような場合のベテラン経理は、元帳を開き、該当の1件の取引をピンポイントで確認します。
④「仮払金・立替金・雑費の残高が膨らんでいる」パターン
違和感のポイントとして、 勘定科目が不明なものを一時的に入れる「仮受・仮払・雑費」は、決算に向けて減っていくのが正常です。
これが月を追うごとに増えているのは、現場や担当者が「処理に困ったものを放置している」サインです。
このような場合のベテラン経理は、放置されている項目の理由を追及します。
「違和感センサー」の鍛え方3ステップ
この違和感センサーは、天性の勘ではなく「正しい観察の型」を繰り返すことで誰でも身につけられます。
試算表は「月次推移(12ヶ月並列)」で見る
単月のP/L・B/Sだけを見ても違和感には気づけません。
必ず「過去12ヶ月の数字が横並びになった月次推移表」を出力します。
横に視線を走らせ、「突起している数字(急増・急減)」や「あるはずの数字が消えている箇所」に疑問をもち、問題がないか確認する習慣をつけます。
数字の背後に「現場の動き」を重ね合わせる
経理の席に座って目の前の仕事をするだけでなく、社内のニュース・情報を得ることが大切です。
「今月は営業が新店舗を開設した」「大型のセミナーを開催した」という現場の出来事を把握しておくことで、「だから今月は広告宣伝費と支払手数料が増えているんだな」と、数字と現場を連動させて考えることができます。
上司、税理士や監査法人の「指摘パターン」を蓄積する
過去の決算や試算表チェックで、税理士や上司から「これどうなってる?」と突っ込まれた項目をすべてメモしておきます。
「他人がどこに違和感を抱いたか」のパターンをストックしていくことが、自分自身のセンサーのパターンの幅を広げることができます。
まとめ:違和感に気づける経理人が、AI時代に生き残る
AIや自動化ツールが仕訳入力を代替する時代において、「ミスなく入力する作業者」の価値は下がり続けています。
しかし、「システムが出した数字の歪みに気づき、現場にヒアリングして修正できる経理」はAI時代で求められる人材です。
「なぜこの数字になっているのか?」という疑いを持ち、試算表の横のストーリーを適切に読めることが、経理として重宝される本質的なスキルなのです。
今回紹介したポイントを抑えて、実務のなかでチェックのパターンを増やしていき、経理の違和感センサーを身につけていきましょう!

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